まほろばスタッフです。
2017年5月3日 まほろば 初の単独公演「まほろばの夜明け」が行われました!
今回はそのライブレポートをお届けします!
◆ライブデータ◆
日時:2017年5月3日19:00〜
会場:すわんど(さいたまスーパーアリーナ5F)
天気:晴れ
◆演目◆
intro. 月光記 (inst)
1. 寿【視聴】
2. 祭神-MATSURIGAMI- 【視聴】
3. 雫 / 雷獅子(太鼓独奏)
4. シャンバラの丘【視聴】
5. 水上サーカス【視聴】
〜日の入り (inst) 〜
6. ハレの国 【視聴】
7. 夜光鳥
8. おいで 【視聴】
9. 我が里【視聴】
10. 夏のかけら【視聴】
11. まほろばの夜明け【視聴】
encore1. さらば
encore2. 大海に光りの舟よ【視聴】
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会場はさいたまスーパーアリーナ5Fにある「すわんど」。
通常のライブハウス・ホール等とは異なる様式の会場という事もあり、当日まで幾度も足を運び入念な音響・照明リハーサルを行ってきたまほろばとスタッフ。
単独公演は結成当初から目標の一つだったというだけに、演奏はもちろんのこと、音響・照明・演出等、会場の隅々にまでまほろばのこだわりを感じ取ることの出来る公演となった。
まず会場に入って目に飛び込んできたのは、ステージ後方でゆらゆらと揺れる美しい照明。色を変えながら雲のように波のように揺れ続ける光と、ステージ前に置かれた松明(照明)、そして聞こえてくるのは虫の鳴き声、パチパチと火の燃える音…。会場に一歩足を踏み入れた途端、幻想的なまほろばの世界に入り込んでしまう。
SEのボリュームが絞られ、流れてきたのは2014年にまほろばが世の中に初めて公開したダイジェスト音源集にも入っていた1曲【月光記】、まほろばとしては珍しいインスト曲である。日本楽器を多く使用した壮大なこの曲にのせ二人が姿を表すと、会場からは自然と拍手が。
達-TATSU- は白いシャツ、白い袴に白足袋と全身を白で覆った衣装に、長い髪を銀の布で結い、両手首にも同じく銀の布を巻いて登場。一方の 春-HARU- は紅色のワンピースに銀色の帯を巻き、腕にはサラサラと揺れる短冊状の腕飾り。そしてこれまでの黒髪から一変、金色の髪で登場。まほろばの原点が「日本」そして「ファンタジー」であることがそのビジュアルからもよく伺える。そして、それぞれが片方ずつ付けた銀色の房で出来た耳飾りが、二人のつながりの強さを表しているようで印象的だ。
深く一礼をし、達-TATSU- がセット後方の大平太鼓を力強く打ち出す。それを追いかけるように重なってくる繊細なピアノのメロディ。1曲目【寿】は子供の逞しき成長を祈る楽曲。「命はお前の中にある 父母の宝よ」という歌詞が胸に刺さる。途中、バックトラックがビートのみになると「今日という日は一度きり、この日この時を共に楽しみましょう」という 春-HARU- の言葉。後半は民族的なコーラスワークに太鼓と歌の掛け合いと、鼓動の速度が徐々に上がっていくようなエンディングを迎え、1曲目から重量感のあるパフォーマンスを見せつけた。
間髪入れずに、達-TATSU- が打ち鳴らす銅鑼の音で始まったのは【祭神-MATSURIGAMI-】。リリースはされていないものの、2015年に音源が公開された当時から人気の高い楽曲だ。まほろばの掲げる「新時代-MATSURI-サウンド」の原点とも言えるこの楽曲はベースレスながら、細やかに動く篠笛と、シンプルながらも連続して打ち続けられる太鼓のリズムが祭りの高揚感を作り出している。特に後半で畳み掛けるように連打される太鼓の演奏は圧巻で、曲が終わると客席から大きな拍手が起こった。
のっけからボリュームのある楽曲を2曲続けて演奏した二人、息を整えるかのように入ったMCでは、まほろばという名を掲げた所以、そして「本日はこの場所が皆さんのまほろば(素晴らしい場所)になることを祈っています。」と結んだ。
舞台が暗転し、達-TATSU- の太鼓独奏へ。1曲めの【雫】は、断片的な太鼓の打音とコーラスのSEから始まり、最終的には完全に太鼓のみの独奏となる。徐々に早くなるバチさばき、その微かな心の迷いも許さぬ緊張感に、会場全体が集中力を高めていく。いっときは目にも留まらぬ速さまで至った 達-TATSU- のバチがその速度を緩め、楽曲が終わったかのように思ったその瞬間、突如会場に響き渡る力強い一打。2曲目の【雷獅子】の始まりである。
その名のごとく雷のように吠え、荒ぶる獅子を彷彿とさせる猛々しい太鼓の中に、ピアノと笛のメロディがドラマティックに展開していく。息を呑むような激しい演奏、自らを鼓舞しているとも取れる声、達-TATSU- から放出されるエネルギーが会場を充満させ、まほろばが「太鼓」をメインとした音楽ユニットであることを改めて知らしめた。
達-TATSU- への賞賛と思われる大きな拍手を沈めるように、風の音が聞こえてくる。それにのせてアカペラで 春-HARU- が歌い始めたのは【シャンバラの丘】。歌詞がしみじみと響くバラードが、急上昇した会場の熱気を鎮めていく。「うそつきはだれ?」という印象的な歌詞を残し楽曲が終りを迎えるとともに、振り子時計が時を刻む音がなり始める。
重なる波音の先に待っていたのは【水上サーカス】。これまでのまほろばサウンドにはなかったアコーディオン・クラリネット・ティンパニなどが賑やかに鳴り響くバックトラックと太鼓が絶妙に混ざり会い、サーカスという「夢と狂気」の世界を作り上げている。サーカスの中で生きる幼き少女の哀しみを歌った歌詞が、華やかさの中に紛れた深い暗闇を感じさせる、ある意味では非常にまほろばらしい一曲である。エンディングでは 達-TATSU- の太鼓の源流でもある、福井県に古くから伝わる奏法「野良打ち」をアレンジした演奏も見られた。
ダークファンタジーとも言える2曲を演奏し終えると、BGMが流れ始める。オリエンタルな雰囲気が漂うインスト曲【日の入り】にのせた、春-HARU- による口上、そして鈴の音とともに、遠くから聞こえて来たのは【ハレの国】の前奏。まさに神々の行列がこちらに向かっているかように「それそーれ!」「とーもーえー!」という掛け声が徐々に近づいてくる。曲中の歌詞に合わせて付けられた春-HARU-の踊りが、先日公開された同曲の派手やかな世界を更に華々しく彩る。
ワンコーラスを終えたところで、春-HARU- からの「これよりまほろばの神々が皆さまの前を通ります。」というアナウンス、そして神々を称えるための手拍子の誘い。「とは言え神様は姿が見えないものですので、皆さまの心の目でご覧頂ければと…」と付け足すと、笑みを浮かべるオーディエンスの姿も。
徐々に大きくなる手拍子の中「まほろばの神々のおなーりーー!」という 春-HARU- の合図とともにガラリとサウンドが変わり、同時にカラフルな照明が点灯。達-TATSU- は五色の布をかけた桶胴太鼓を担ぎながら演奏し、春-HARU- は紙吹雪を客席に撒きながら舞台前を左右に歩いてゆく。会場全体が姿なき神々の行列をこれでもかとおもてなししているようだ。
「皆様、お力添え誠に有難うございました!」
手拍子の中演奏される楽曲はまさに「ハレ」を祝うような賑やかさの中、「はればれ 日本晴れ」というめでたい歌詞で締めくくられた。
続く未発表曲【夜光鳥】はデジタルサウンドをふんだんに使用したキラキラとしたポップチューン。木琴をメインに作られたキャッチーなリフがループするサウンドに、春-HARU- のどこまでも伸びやかな歌声が重なる。「光をまとった美しい鳥が夜の空を音もなく飛んでいる」そのようなイメージで作ったという楽曲は、ファンタジーの中にもしっかりと日本を感じさせる太鼓のリズムが心地よく、まさにまほろばにしか出せない新しい日本音楽の世界を生み出していた。
二人の動きが完全に止まりピアノのコードがディレイ、このままフェイドアウトするかと思われたが、コードはクレッシェンドしていく。ディレイのタイミングに合わせるように赤・青交互に点滅する照明、まるで人形のように止まったままの二人、徐々に大きくなるサウンド。音量がピークに達したと思った瞬間に舞台は暗転、「おいで」イントロのコーラスがカットインするとざわめく会場。歌に入る直前、同時に動き出した二人は、それまでの2曲で見せたにこやかさから一転、無表情とも言えるシリアスな出で立ちで、まるで私たちの知らないふたりだけの空間から戻ってきたような印象を受ける。
リリースはもちろんのこと、スタジオ演奏動画も公開されている【おいで】の演奏にオーディエンスも体を揺らしながら楽しんでいた。暗闇の会場内でストロボのように灯る色とりどりの照明はさながらクラブのような雰囲気。オーガニックな歌詞と心臓に響く四つ打ちのサウンド、跳ねるように軽快に打ち込まれる 達-TATSU- の太鼓。「遊べ命果てるまで」この曲のテーマとも言える歌詞が歌われ、サウンドの盛り上がりとともに会場は一気にヒートアップ。曲が終わった瞬間に割れんばかりの拍手が巻き起こった。
鳴り止まぬ拍手の中はじまったMCで、春-HARU- はふたりの故郷について語った。
「二人共同じ福井という土地で生まれ育っているので、自然という言葉を1つとっても見えてくる景色に共通点がある。そのような故郷の存在がまほろばの音楽の源になっていると感じる。」
MCが終わると同時に 達-TATSU- は舞台中央、春-HARU- のすぐ横に桶胴太鼓とともに移動。座奏で行われたのは未発表曲【我が里】。アカペラでの独唱から、コードと歌、さらに多重コーラス、ハーモニーと重なっていく、これまでにない非常にシンプルな楽曲は、その歌詞に深い感銘を受ける。
「恐れはいらぬ 迷いもいらぬ その生命 いつか必ず 我が里の土に還る」
自然に発生した手拍子の中、最後のフレーズはマイクから離れ生声で歌った 春-HARU-。オーディエンスの温かさに対し、深く一礼をしていた姿が印象的だった。
春-HARU-が頭を上げるのと時を同じくして流れてきたピアノの音色。鍵盤に指をそっと置くように、大切なものに触れるように紡がれるピアノは徐々に広がりのあるコードへと発展していく。未発表曲【夏のかけら】のイントロである。
まほろばサウンド、その特徴の1つでもあるコーラスワークが一切なく、1番が歌とピアノだけで演奏される純粋なバラード曲は、春-HARU- の繊細な歌声が特に際立つ。まるで夏の始まりに背を向けるような主人公の想い、そして夏を迎える小さな町の景色がありありと浮かんでくるような美しい歌詞を、感情たっぷりに歌い上げた。梅雨と夏の間に突然降り出した雨を表現した 達-TATSU- の締太鼓も情緒を醸し出していた。
曲が終わると同時に流れてきたのは、今回単独公演のタイトルともなっている【まほろばの夜明け】のイントロ。まほろば結成と共に生まれたこの楽曲に無くてはならない印象的な笛のメロディにのせ、感謝の気持ちを伝える 春-HARU-。
「本日は誠に有難うございました。本日はこれでお別れとなりますが、まほろばの音楽は続いていきます。そしてこのような公演を通して、また皆さまにお会いできることを心より願っております。また必ずお会いしましょう。」
一言一言を噛みしめるように伝えると、達-TATSU- の太鼓に導かれるように楽曲の世界へと戻り、まほろばの源でもある楽曲を全身全霊で表現するふたり。「崩壊と再生」という壮大なテーマで描かれたこの楽曲は静と動を巧みに織り交ぜた展開となっており、達-TATSU- のエモーショナルな太鼓が、喜び、哀しみ、怒り、愛…様々な人間の感情を呼び起こす。音源だけでは到底知り得ないであろう、楽曲が持つ深みを感じる演奏で本編最後を締めくくった。
深く一礼をし会場を後にする二人。
大きな拍手はやがてアンコールとなり、二人は再び舞台へ。
アンコール1曲目は、意外にもキレの良いアッパーチューン【さらば】。太鼓のリズムと相性の良い激しいサウンド、そしてふたりのピタリと息の合った振り付けが目を楽しませてくれる。「涙はこらえて さらば おさらば」という歌詞もアンコールという場面に相応しい一曲だ。
アンコール1曲目が終わると、「本日まだ一言も声を発していない達-TATSU-にマイクを運びます」という春-HARU-の言葉に会場は笑いに包まれる。そしてこの日初めてマイクを握った 達-TATSU- に、待ってましたと言わんばかりの大きな拍手が浴びせられた。そんな中、達-TATSU- が話し始めたのはまほろばという名前に込めた自身の思い。
「大げさに思われるかもしれませんが、生きていく希望を失いかけていた時期がありました。太鼓で人々に音楽を届ける前にまずは自分がしっかり生きなくちゃいけない。そう感じた時に自分にとっての素晴らしい場所、希望の場所を作らなければ何も始まらないと思い、作ったのがこの『まほろば』です。しかし自分のためだけに音楽をやっていてもとても続けられない。ですがお越しくださる皆様にとっても僕ら『まほろば』が素晴らしい場所であれば、そこに良い循環が生まれ、ずっと続けていけると思ったんです。」
そんな 達-TATSU- の言葉をつなぐように
「私たちには希望が必要な時期がありました。最後の楽曲はそんな『希望』を表現した曲になります。」
と話す 春-HARU-。そして始まったアンコール2曲目、公演最後となる楽曲は配信デビューシングルでもある【大海に光りの舟よ】。日本的で繊細なピアノの旋律と歌のみのオープニングから一変、太鼓ソロへと展開していく「出航版」である。まるで舟に乗り込む旅人の心を、そして自らを奮い立たせるような 達-TATSU- の太鼓。その力強い打音にはこの楽曲、そしてまほろばにとっても大きなテーマと言える「希望」に対する、達-TATSU-の強い想いを感じずにはいられない。
舟歌をイメージさせる「ト ト トイヤーサ」というキャッチーなサビ、華やかなコーラスとカラフルなサウンド、全身で喜びを表現するような 達-TATSU- の太鼓、そしてオーディエンスの手拍子。「皆で進め」という歌詞に合わせ、春-HARU- が両手を広げながら客席を見渡すと、今まさにこの会場にいる全員が希望の舟に乗っている、そのような一体感で会場が満たされていた。
終始笑顔で最後の演奏を終えた二人。
達-TATSU- の「有難う御座いました!」という言葉で、まほろば初の単独公演は幕を閉じた。
当日、会場では限定CDの他、まほろば初のグッズとなる「太鼓ストラップ・イヤホンジャック」も販売された。終演後の2人が物販ブースに現れると、待っていた多くのファンから歓声と拍手が。温かな歓迎の中、2人は撮影に応じたりCDにサインをするなどファンとのひと時のふれあいを楽しんでいた。
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改めまして、まほろば初単独公演「まほろばの夜明け」にお越しいただきました皆さまに、心より御礼申し上げます!
今後のまほろばにも是非ご期待ください!
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